太陽がきっかり頂上に差し掛かった正午。
乾燥地帯のこの国では湿気を感じることはない。が、暑いことにはなんら変わりない
黄塵の交じった風に緩やかに体を撫でられながら、リョーマは抱えた紙袋を抱き直した。
中には乾に頼まれた物が入っている。
殆どがこれを頼んでくれた(使われたことに多少不服を感じる)彼自身の手によって
活動のための武器に生まれ変わる。
武器の内蔵を詳しく見たわけではないので、店先で品物を確認しながらどんな物が
出来上がるのか少し興味を沸かせた。
が、とにかく重いのでそんな興味を抱いた自分に少なからず今後悔の念を抱き始めている。


「小龍包お持ちしました〜」


のんびりとした日常がリョーマの耳に飛び込んだ。
鈴のような声音が耳の奥で木霊する。


「おう、お嬢ちゃんこっちこっち。待ってたぜ」
「はい、お待たせしました」


にっこりと少女は微笑んで机に皿を並べる。






(…………あっ……)






もともとやる気なくダラダラと進んでいたリョーマの足が止まった。
釘付けになったように視線を外せず、扉がオープンになっている店を見つめる。


「ここの小龍包がうめーんだ、これが」
「いんにゃ、ここのラーメンがうまいんだよ」
「違うさ、伴さんの小龍包は絶品なんだ」
「ラーメンだ!」


互いの好みに反発しあう客に、少女は可笑しそうに笑って


「どっちも最高においしいんですから、比べないでください」


わざと頬を膨らまして言えば、お互いの胸倉を掴んでいた客は次の瞬間笑い飛ばした。


「はっはー、桜乃ちゃんにはかなわんね。さすが店の看板娘」
「ああ、朋香ちゃんといい、いい商売してるよ」
「ありがとうございます」


大の大人二人をうまく丸め込んで、三つ編みをなびかせながら桜乃はキッチンへ引っ込んだ。
一部始終見て、我に返ったようにリョーマは歩き出す。
知らないうちにあの少女の店の前を通りかかったのは迂闊だった。
しかも、顔を知られているのに立ち止まるなど。見つかればいらぬ警戒心を抱かれかねない。
向こうも運び屋だ。
何を仕掛けてくるかわかったものではない。




それなのに





「何やってるんだか」




毒突いて、リョーマはもう一度、少しだけ振り返った。








たまたま通ってしまったリョーマくん。無意識です。
愛かな?(笑)
これ、副タイトルは「リョーマのお使い」です。
バラエティみたく。




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