「え、武器が!?じいちゃん、それ本当なの?」


慌てる朋香の声が営業時間を終えた店内に響き渡る。
当然客はもういないので、店内に寛いでいるのは従業員、しかも副業の従業員だけである。
したがって、朋香の声を聞き咎めるのも事情を知っている人間だけに限られる。
でなかったら、こんな物騒な話しを大声で漏らせるわけがない。
どうでもいいことをつらつら浮かべて、桜乃は視線を親友に移した。
朋香がもし犬だとしたら全身の毛を逆立てていることだろう。
伴に詰め寄る形で………本気で詰め寄っている。


「ええ、ですから〃姫〃と〃龍〃に行ってほしいんです」


あくまで冷静に伴は言った。


「………それ、チェックした時は何の反応もなかったですよね?」


二枚の絵を見ながら桜乃は問う。カチローが頷いた。


「うん。でも間違いないよ。それは必要な条件が初めてそろった時に反応するものらしいんだ。
 見比べてみて。右のが僕達が運んだもの。左のが本に載ってたもの」


見比べてみるまでもない。まるきり一緒だ。





「………妖刀……」





自分で呟いたその単語に背筋が粟立つ。


「でも、運んだのは味方の貴族にでしょ。注意しろって言っとくだけじゃだめなの?」
「それが、以前運んだ貴族が、反政府だと判明して根絶やしにされてしまったんです。
 敵側に全て武器を奪われてしまった。幸いまだこの刀のことは発見されていません。
 ですが………」


「条件が、そろそろ揃いそうなんだ」


伴の後を引き継いだカチローの台詞に、朋香と桜乃は目を見開いた。


「条件って?」


緊張した面持ちで朋香が問う。


「満月だよ。月が満ちることで妖刀に力が注がれ、頂上に来ると力が作動するんだ」
「でも、満月なら周期的にきたはず。今回だけに反応するなんておかしいよ」



「満月ともう一つ。能力者が側にいること。これが条件なんだ」



「能力者………」


それはつまり、奪還する屋敷にその人物がいるということだ。
自然と表情が険しいものになる。


「だから今回二人で行ってきて欲しいんです」


危険を分かっているから訪ねる伴も強制的にはなれない。




しかし




「運び屋が奪還するなんてちょっと変わってるけど、やります」
「私も。桜乃、あー作戦中は〃姫〃か、が行くならボディガードとして付いていくわよ」
「朋ちゃん……ありがとう」


嬉しさを噛み締めるような桜乃の表情に朋香は笑った。


「じゃあ、二人とも用意して」
「分かった」
「はい」


それぞれ返事をして店の奥へ消える。
そのまま地下の階段を下るためだ。
一階は店、二階以降は朋香と伴と桜乃(たまにカチローが下宿することもある)が生活している。
そして、隠し階段を下りた地下には運び屋としてのアジトがあった。
消えた二人を見ながら、カチローは息を付いて外を見つめる。
深い闇が広がっていた。








さあ、段々と雲行きが怪しくなってきました。
もとはファンタジーにしようと思っていたので、「妖刀」とか「能力者」とか、
これからバンバン出てきます。
act.3(カッコいいから今つけた)はとりあえずここで終わりです。
次はact.4で会いましょう!!絶対!?




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