―――― 準備はいいかい?





幸運絶対値








 行き慣れた公園の木の下から、涙を流していた空を見上げてみる。

(今日に限って晴れなんて、アンラッキー…。)

 最近はアンラッキーな出来事がたくさんありすぎた。

(『ラッキー千石』ってあだ名を付けられてるのにな〜。)

 あまりのついてなさについ溜め息をはいてしまってから、
大体こういうのって、俺のキャラじゃないんだけどねと、
揺れている木の葉を見ながらぼんやりと考える。


(ここに来ておいてナンだけど。)

 あの子と初めて会話した公園は、あの時のようにあまり人はいなくて。

(ぐるぐるぐるぐる・・・。)

 考えがおんなじところを回ってしまうから、考えるのにうってつけなんだか
そうじゃないんだか、判断に困る場所だ。

(邪魔がはいらない静かなところってのも問題だねぇ・・・。)


 学校で悩んでいたら、「千石が悩んでる?!」なんて色んな人に言われちゃったし。

 家で考えてたら気がめいっちゃうし。

 どこか良い場所はないかなと思って家を出たら、ここに来てしまっていた。



「・・・複雑だなあ。」

 ここに来ると、あの子の笑顔を思い出すから嬉しい。

(けど、今悩んでいるのはまさにその子のことだし。)

 きっと、俺の心は昨日の空みたいに、マーブル模様を描いている。






 と、突然何かが俺の方に向かってきた。

 難無くそれを掴む。

(・・・なんだ。チラシか。)

 そう思ってゴミ箱に捨てようとした瞬間、ちらっと見えた文字。

『自分の運を試してみないか?』



 それは、ただの宣伝文句だったけど。

「・・・試してみよっか?」

 そう言いつつ丸めたチラシをゴミ箱に投げる。


  見事ホールイン。

「・・・ラッキー。」

 最近言えなかったセリフを口から出すと、なんか新鮮だ。

(このまま何もしないなんて、俺らしくないし。)

 木陰から立ち上がり、早くも遅くもない歩調で歩き始める。
 あそこまでの道のりはもう覚えてしまった。


 道の途中で、祭りのポスターを見つけて。

 俺の気持ちを感じた様に、信号機は全部青。



 思ってしまったら、もう緊急停止は出来ないんだ。

 君は知らないだろうけど。
 俺は君をすぐに見つけることが出来るんだよ?



 校庭に入ってすぐ、窓際に立っている桜乃ちゃんを見つける。

 彼女が見つめている空には、橙がはいっている虹。



 心なしか、歩調が早くなる。



 悪いけど、負けるつもりはないよ?







  ――― Trial of luck?






どうやら天狼には、千桜はラヴい、
いちゃいちゃしたのしか書けないようです。
イチャラヴあまり得意ではない方にとっては、
天狼の千桜はデンジャラスゾーン。