伊武・神城との試合を勝利で飾ることが出来、俺は内心ではとても喜んどった。
 何故なら、彼女が見ている試合では勝ったことがなかったから。
 敗北は嫌いだが、彼女の前で格好悪い姿をさらすのは更に嫌いだ。

(男の意地っちゅーやつやな。)

 まぁ、天根との漫才はこの際目を瞑(つむ)っててもらうとしてやな。
 彼女 ―― 桜乃ちゃんの反応が気になってしゃあないから。

 やから、ベンチに座っとる本人に聞こうと思う。

「桜乃ちゃ・・・?!」

 勢い良くベンチを見た俺が見たのは、笑っている桜乃ちゃんの姿・・・。

「うふふv桜乃ちゃんってば可愛いv」
「あ、杏さんっ。からかわないでくださいっ!」

 ・・・・・・・・・・・・・。

「忍足くん、素晴らしい試合だったわ。」
「・・・左様ですか。」








アニプリ第百三十七話「疑われた仲間」を見て書いた小話。
に、忍桜のような杏桜でひとつ。

六月十三日
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「桜乃と語らうのは俺だ!」
「いいえ!桜乃ちゃんと話すのは俺です!」

 Jr選抜の合宿中だというのに、
今日も今日とて「今日最後に桜乃と話すのは誰だ戦争」が合宿所内で勃発していた。
 桜乃を求めて流離う軍団の先頭をキープしていたリョーマが急に立ち止まる。

「どうしたんだよ越前。」
「しっ。竜崎が誰かと話してる・・・。」
「え・・・?!」

 リョーマの視線の方向を全員が見やると、確かに桜乃の姿があった。

「お、携帯で誰かと電話してんのか。」

 携帯に向かって何事か喋っている桜乃は満面の笑顔で。心なしか頬が赤い気さえする。

「・・・相手が気になるね。」

 周助の一言で、それまで争っていた人達は一致団結した。
 無言で頷きあうと、気付かれないように細心の注意を払いつつ桜乃に近寄っていく。








さぁ〜て、犯人は誰でしょう?
分かった方やなんとなくこの人だろうと推理出来た方はスクロール!

























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 もう大分近くにきたというのに、桜乃がそのことに気付く様子はまったくなかった。
 一同は、彼女の鈍さに今日という日は心の底から感謝した。

「・・・だよね。」

(おっ!途切れ途切れだけど会話が聞こえてくるようになったっすね。)
(でも肝心の相手が分かりませんよ。)
(もうちょっと近付くか。)

 ばれるのを覚悟した上で桜乃にもっと近付いていく一同。
 それにつれて段々よく見えるようになった桜乃の顔に、男どもは皆一様に心を奪われた。
 ちょうど集中力も切れかけてきたところだったので、会話が生まれてしまう。

(それにしても、いつ見ても可愛いっすね〜桜乃ちゃんは。)
(当たり前じゃん。)
(おいてめーら。俺の桜乃に手ぇだすんじゃねえよ。)
(いつからお前のものになったんだよ!!)←跡部以外の人の突っ込み
(しっ。竜崎が何か喋り始めたぞ。)
(!!!)

 野郎どもが張り詰めた空気の中で聞いた桜乃の第一声は。

「うん。私も朋ちゃんのこと大好きだよv」








結局またこんなオチかい!!(忍足)

いや、オチてもないよね忍足。
どうしよう。どうしましょうか。今度は朋桜ですよ。

六月十四日
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「あ〜…。今日も朝から大忙しだわー。」
「そうだね。」(切原さん、傷大丈夫なのかな・・・。)
「これじゃあリョーマ様を満足に見ることも出来ないわー。
 なんのために合宿に来たのかわかんないじゃないー。」
「ボランティアのためでしょう?」
(そういえば今朝も一人だったけど、何かあったのかな・・・?)
「はぁ・・・。」

 溜め息を付くと、朋香は一度ダンボールを地面に置き、
各班の練習場所が書いてある紙を出した。

「えっと。華村班はトレーニングルームか。よし!じゃあこっちは私が行くから、
 桜乃君はテニスコートの榊班のところへ行ってくれたまえ!」
「了解です!隊長!」(・・・時間があったら会いにいこうかな?)








アニプリ第百三十八話「リョーマVS切原!激闘を超えて」を観て書いた小話。
桜乃ちゃんの無表情に近い表情、気になりませんでした?
こうだったらいいな〜とか思って書いちゃいました。

六月十八日
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 夕食を食べ終え、部屋へと続く合宿所の廊下で、桜乃は華村に呼び止められた。

「竜崎桜乃ちゃん・・・だったわよね?」
「え・・・?あ、は、はい!」

 まさか自分が呼び止められるとは思っていなかった桜乃は、反応が遅れた上に
変な声で答えてしまった自分を恥じた。
 華村は、それにいつもの微笑を絶やさずに対応する。

「うふふ・・・vそんなに緊張しなくてもいいのよ。」
「は、はい。・・・それで、私に何か用でもあるんですか?あ、足りない物でも・・・。」
「いいえ。私はあなたについて聞きたいことがあったから来たの。」
「私について・・・ですか?」

 華村の眼鏡が怪しく光る。

「ええ。あなたもテニスをやるのでしょう?」
「は、はい。・・・へ、下手ですけど。」
「私はね、あなたのコーチをしてみたいの。」
「は、はあ・・・。・・・え?!わ、私なんてコーチしたってつまらないですよ?!」
「あら、若いのにもう決め付けてしまってはいけないわ。」
「で、でも・・・!」
「『私なんか』っていう想いが本当の実力を押し込めているかもしれないじゃない?
 私ならあなたの実力を引き出してあげられると思うの。」
「は、華村先生・・・。」

 桜乃は華村によって一種のはにゃ〜ん状態になっている。

(私の言葉に大分ほだされているみたいね。このまま私のところにきてくれないかしら。
 桜乃ちゃんが来てくれたら・・・。う・ふ・ふ・・・v)

 目の前で一歩間違えれば変態の様なことを思い浮かべている美人教師の、
いや、皮を被った狼の正体に桜乃が気付くはずもない。








華村×桜乃もどき小説、終わり(?)です。
華村さんがおかしいとじゅんさんが言っていたのをすかさず拾ってみました。
桜乃ちゃんは一体どうなってしまうのでしょうね?

六月二十日
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「華村先生。」
「あら榊先生。どうしたんですか?」
「君が桜乃くんをスカウトしたという噂を聞いたのでね。」
「情報が早いですね。流石榊先生。」
「・・・私はそんなことを聞きにきたのではない。」
「分かっていますわ。」

 ふふふと短く笑ってから、今まで体を預けていた窓から少し距離を置き、
華村は喋り始めた。

「大丈夫です。」
「・・・。」
「彼女は私にこう言いました。『私にはもうコーチがいるから』と。」
「・・・やはり。」
「ええ。あの子にしてやられたようですわ。」
「では、どちらがコーチとして優秀か。」
「彼女の前で証明してみせましょうか。」


 野望に燃える二人の変態教師は、最後に勝者と成りえるのであろうか?
 水曜に続くかもしれない。








・・・昨日の続きですね。

六月二十二日
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「お誕生日おめでとうございます、杏さん。」
「ありがとう桜乃ちゃん。」

 笑顔で御礼を言う杏に、桜乃の表情は曇る。

「あの、いいんですか?」
「なにが?」
「・・・・・・誕生日プレゼント。」

 見てみれば、桜乃の手にも、杏の手にも、プレゼントとおぼしき箱の姿はなかった。
 表情をまったく変えない杏とは違い、桜乃の表情は固いし、
そわそわして落ち着かないのが手に取るように分かった。

「うん!だって、プレゼントは今もらっているから!」
「・・・え?」

 どこですか?と訊ねるように自分を見上げてくる桜乃に、
杏はとびきりの笑み付きで言い放った。


「朋香ちゃん抜きで・・・。二人っきりで会いたかったの、桜乃ちゃんと。」








杏ちゃんの誕生日当日にそのことを思い出し、
日記に急遽書いた杏桜。

六月二十八日
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 見て見て朋ちゃん、という台詞と一緒に重たい物を置いた音が聞こえ、
びっくりして食卓の方を向く。
 すると、私が頼んだジュースと一緒に四角いものがスーパーの袋に
入っているのが確認できた。

「何それ?」
「え?チョコボールだよ?ねえねえ、朋ちゃんも一緒に開けよう?」

 さらりと渡された、たった今ビニールテープから出されたチョコボールをじっと見つめる。
 その後に、食卓に置かれた中くらいの箱を見る。
 ・・・箱というよりは、散らばらないように紙で下だけ囲ったってのに近いけど。
 ええと、ひとつの箱(?)に、いち、にー・・・・・・二十箱入ってるじゃない。
 しかも箱(?)は二つあって、芸が細かいことに、その二つは味が違った。
 けどね、いくら味が違うからといって食べ飽きないなんてことはないのよ桜乃?

「・・・こんなに買ってどうするの。」
「あのね、私、一度でいいからチョコボールを一箱買って来て、
 その中にエンゼルマークがいくつ入ってるか調べてみたかったの!」
「そういうことはデータオタクの乾先輩に聞きなさいよ!」
「乾先輩に言ったらね、『分かったら是非教えて欲しい』って言われたよ?」
「はあ?!」
「乾先輩、チョコレートはちょっと苦手なんだよねー。」

 そう言って意気揚々とビニルテープを剥がしている桜乃に、これ以上言えるはずもなく。
 近くにあったチョコボールを手に取り、渋々くちばしを調べ始める。
 けれど、折角四十箱も買ったのに、銀のエンゼル二枚しか手に入らなかった。

 ・・・くやしい。








天狼が体験したことをそのまま桜乃ちゃんにやってもらいました。
あんなに買ったのに、銀のエンゼル二枚ってどうゆうことだよ!!

八月十六日
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