いちごにかけましょ







「どうかしたんですか?」

 どう見ても不服そうな顔をしている自分の彼氏に、桜乃が問いかける。

「いや、なんでもない。」

 恥ずかしそうにぷいっと顔を背けた裕太は、やっぱりまだ不服そうで。

 桜乃は何気なく裕太の手を見た。
 そして裕太が持っている物の中身を見てああと頷いた後、鞄の中に手を
突っ込んで何かを探し始めた。

「桜乃?」

 彼女の行動に疑問を持ちそう聞いてみるが、行動を止めようとはしなかったので、
裕太は気長に待つことにした。

「はいどうぞ!」

 そのちょっと後、満面の笑みを浮かべた桜乃が裕太の手の中に何かを
落とした。
 にこにこ笑っている桜乃に聞きたいことは多々あったが、手の中にある物体を
裕太は見てみることにした。

「・・・なんだこれ?」

 裕太の手の平の上には、小さいプラスチックの容器がちょこんと乗っている。
 よくよく観察してみると、それは喫茶店などで飲み物を頼むと付いてくる、
ガムシロップとか粉末クリームとかが入っている容器に似ていた。

「コンデンスミルクです!」
「・・・・・・これが?」

 そう言われれば、裕太の手の中にある物体の粉末クリームだと○リープとか
書いてあるところには、苺の写真が所狭しと並んでいた。

「使い切りタイプなんですよ、それ。」
「へー。コンデンスミルクにもあるんだ。」
「ええ。私もこの間スーパーで見かけて買ってみたんです。」

 尚も珍しそうにそれを見つめている裕太を、桜乃は嬉しそうに見ている。


「・・・なんだよ?」

 その視線に耐えられなくなった裕太が小さくそう言う。

「これで苺が食べられますね。」

 桜乃の言葉に、裕太の顔が一気に赤くなる。

 裕太の膝の上には、苺だけ残っているお弁当。


「ねっ?」
「・・・・・・おう。」
「あ・・・!私の残り物でごめんなさい!!」
(・・・可愛い。犬みてぇ。)

 慌ててそう謝罪する桜乃を見て裕太は和んだ。
 桜乃の頭に手を置いて、いささか乱暴な手付きで撫でる。

「ゆ、裕太さん?」

 撫でられている桜乃には、なにがなんだか分からない。




「・・・さんきゅ。」



 今も頭に手を置いたままの裕太に笑顔でそう言われて。

 裕太の微笑はほんとのほんとに貴重なもので。

 そんな表情を見れたことに嬉しくなりながら、



 桜乃は、さっきの裕太と同じ感想を抱いてしまった。






初裕桜です。

これはこの話の題名と同じ名前のコンデンスミルク(使い切りタイプ)
を見た時に一瞬で考え付いたお話です。