写真 先輩は私を写してはくれない。 カメラを持っている時でも。 私の隣で写真を撮っている時でも。 その手の中のレンズに、私を写してはくれない。 それが不安。 私は必要ないって言われているようで。 ねえ先輩。 私はそれが不安でしょうがないのです。 でもいつか。 いつか私を写してくれると信じることは許してください。 どうか。 それだけは、どうか。 僕の趣味はカメラ。 だから自然に、部屋の本棚に置いてあるアルバムは増えていった。 でもどうしても撮れないモノがある。 桜乃ちゃんだ。 彼女を写真の中におさめてしまうと、 彼女のもつすべてのものが色褪せてしまう気がする。 正直、恐い。 僕の中にある気持ちが、彼女を傷つけませんように。 どうか。 ――― どうか。 戻る >> |