「よし!じゃあ学祭中は女子は学ラン着用な!」

 いきなりそう叫んだのが誰だったのかは知らないけど、その一言で女子の学ラン着用が決まった。

(何がじゃあなのかさっぱり分からない・・・・・・。)

 そう疑問に思ったけど、ノリがよくて仲がいいところがこのクラスのいいところだし、正直学ランを着てみたい気持ちもあったからまぁいいかとも思い、クラスの子達と学ランをどこで調達しようかという話をしている時だった。
 誰か学ランを女子に貸してやれよという叫び声が聞こえ、その声の主だろう人物がたまたま指名したのは私と用ちゃんだった。
 いきなり苗字を呼ばれ呆然としながらも用ちゃんを見れば、彼も同じように呆然とした表情で私を見た。
 いつも隙をみせないようにしている用ちゃんの無防備な顔が見れたことが何故か嬉しくて、自然と浮かんでしまう笑みをそのままに学ラン貸してくれると問えば、彼は目を丸くした。





 用ちゃんが貸してくれた学ランを羽織ってみて驚いた。

(・・・結構余裕、あるんだ。)

 セーラー服の上から着ていても余裕があることに感心しつつ、さっき用ちゃんが学ランを脱いでいた時のことを思い返してみる。
 凝視していたわけじゃないので詳しくは分からないけど、でも、余裕はあまりなかった気がする。

 用ちゃんって、私よりも少し背が高いくらいだし男の子にしては華奢なほうだから、なんとなく私と同じ体つきをしているといつの間にか思いこんでいたけれど。

(・・・でもやっぱり。)
「お姉ちゃん、何がそんなに楽しいの?」

 気付けば用ちゃんが不思議そうな顔で私の顔を覗きこんでいた。
 用ちゃんがこんなに近くにいることにも気付かない程深く考え込んでいたことが恥ずかしくて、誤魔化すように問い返す。

「そ、そんなに嬉しそうだった?」
「うん、ものすごく。」
(か、顔に出てたんだ・・・!)

 顔に感情が出ていたという事実だけで恥ずかしいのに、用ちゃんの視線が子供を見守る親のもののような気がすることで、ますます羞恥心が刺激される。
 思わず頬に手を当てて冷やそうとするけれど、簡単には熱は引いてはくれない。
 そんな私を見ていた用ちゃんが、ほわんとしてしまうような笑顔を浮かべる。

「ね、用ちゃんてやっぱり私とは違うんだね。」

 笑顔を見ているうちに考えもしないでそんなことを言ってしまって、はっと後悔する。



 だってまるで。





まるで告白みたいだったから