■ 金色稲穂
「いのちゃん、もうそろそろ帰ろう?」 「んー…。いいよ、ヒナタは帰りな。」 「え・・・?」 「いーのよ。これは私の我侭なんだから。」 「け、けど・・・。」 「ヒナタは先に帰って、お父さんに言い訳しといてー。」 「・・・う、うん、分かった。」 「よろしくねー。」 後姿のヒナタに向かって手を振りながら、溜め息を付く。 それから、少し運動してまた元の体勢に。 「わ・・・!」 よしやるかと意気込んだとたんに風が窓から侵入してくる。 先に帰ってもらった友人の、少しでも気が紛れるようにとの気遣いが仇になったか。 (勘弁してよねヒナター。) 床に散らばった紙をかき集めながら、少し愚痴る。 ふいに、はたと動きを止めてしまった。 未だに不法侵入している風にさらりと髪を撫ぜられて、苦笑する。 この風の中から微かに香る、あの少年を思わせる匂いは。 (・・・・・・金色稲穂。) 2004/7/6
■ ・・・いい? 手の中でそっと置いたものの感触を確かめながら、大袈裟に溜め息を付く。 すると、今まで完璧に近い形で気配を消していた人物が、私に近寄ってきた。 「いつから気付いてたんだってばよ。」 「最初から。」 「・・・まじ?」 「まじ。」 目の前に回りこんできたナルトは面白くなさそうに顔を歪める。 「ちぇっ。サクラちゃんとかヒナタは平気なのに、なんでいのには気付かれるんだってば。」 それは、あの子達と私に差があるから。 ナルトに対する気持ちに、差が。 なんて言ってみても、本当にそうかなんてことは分からない。 ちょっといらいらするから、思わずナルトに八つ当たり。 「あんたこそ、どうしていつも私を見つけられるのよー。」 「え・・・?・・・さあ?」 首を傾げて考え込んでるナルトは、元来た道を歩き始める。 私は知った。 それはナルトのフリだって。彼流の、照れ隠しだって。 振り返ってしまう間にしっかり見えた、ほんのり赤かった頬がその証拠。 私は、知ってしまった。 「これ、アンタみたいでしょ?」 「え?」 「あげる。」 先手必勝だから、稲穂の穂先を渡されて困惑している彼の目の前に回りこんで言う。 「あげるから、ウチまで送ってくれる?」 そんな顔されてしまったら、 この自意識過剰な考えが正しいかもなんて思っちゃうじゃない。 ねえ。 ちょっとだけなら、自惚れてみても、いい? 2004/7/7
■ 帰り道 足元から伸びている影を踏もうとしながら、ナルトと一緒に歩く。 いつもは五月蝿いくらいに騒がしい(こう言うと「いのだってうるさいってばよ!」 と反論される)のに、今日に限って静かなのは気味が悪い。 「・・・ねー、何か喋ってよ。」 「はぁ?」 想像していたリアクションだけど、 本当に「何言ってんだ?」って顔しなくてもいいじゃないのー。 「だってナルトが静かだと変っていうか、気味が悪い。」 「・・・・・・酷い言い草だってば。つーかさ、いつもは黙れとか言うじゃん。」 「いつもはいつも、今日は今日。」 心なしか踏ん反りかえりながら言う私に、勝手な女だってばよと言いつつ、 ナルトは考える素振りをした。 ああ、ネタ探してくれてんのね。 「・・・・・・いのはさ。」 「うん?」 「俺が火影になるのは無理だと思う?」 2004/9/18
■ 帰る道 はぁ?と、いのは俺に返してきた。 大爆笑されるか相手にされないか。 どっちかだろうななんて考えてたから、 「はぁ?」って返してくるとは考えてなかったってばよ。 だから、俺は火影になれるのかなって聞いてんの。 だって、ふつーに考えたらサスケとかの方が火影に近いんだってば? ・・・俺ってば、どべだしさー。 自分でも、ちょっと焦っていたと思う。・・・なんに焦ってたのかは分からないけど。 一番驚いたのは、いの相手に不安をバラしてること。 こんなん、かっこわりーじゃん・・・。 「・・・あんた馬鹿ね。」 な・・・?!なんでだってばよ! 「いつもは『火影になる』ってウルサイくせにさ、なんだってそんなこと言うのよー。」 だ、だから・・・!俺だって不安になることだってあるって、気付けってば・・・。 「あんたは馬鹿らしく火影になるって叫んでればいいのよー。」 「そしたら、いつのまにか立ってるかもよ?」 アソコに。 言葉と共に指された場所よりも、傍にいるいのの方が魅力的に映った。 これは。 この感情は? 2004/10/11
■ 自覚/無自覚 最近なんだかおかしいんだってば。 るっせーな!いつもとは違うんだって! ・・・なんていうか、胸のあたりが、もやもや?するってゆーか・・・。 あーもーよくわかんねー!!むしゃくしゃするってばよー!!! あ? ・・・んーっと・・・、いのがいつもいるような気がするってば。 なんだよサスケ!分かったんなら教えたっていいじゃんかよ!ケチ! 「五月蝿い。自分で考えろウスラトンカチ。」 それは、いののことが気になるから。 (なんてこと、ぜってー言ってやんねー。) これだけは佐助→猪乃要素はいってたり。
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