■ まずはここから
窓際に人影を見つけて思わず警戒してしまうが、見知った人物であると判明して、 リナリーは歩調を速めた。 「アレンくん。」 声をかければ、こちらの気配に気付いていたのか、アレンがこちらに笑顔をむけた。 「こんな夜中にどうしたのリナリー。」 「それはこっちの台詞だと思うんだけどな。」 「そうかなぁ?」 「そうだよ。」 たわいのない会話を暫く続けた後、アレンはリナリーに視線を向けたまま答えた。 「習慣かな。」 「え?」 「さっきの答え。夜空を見上げてからじゃないと寝れないっていうか。」 考えながら喋っているアレンをじっと見ながら、リナリーはなんとなく悟った。 彼は以前、誰かとこうやって見ていたのかもしれないということに。 でも、「誰か」が「誰」であるのかなんて、聞けない。 珍しく躊躇してしまっている自分に、リナリーは驚いていた。 この世界、ましてやここではそういう人間は珍しくない。 だから、いつもだったらそんなことは気にしなかったし、 もし気になったなら聞かなかったのに。 いつもはそんな風に行動していたのに、今回は出来なかった。 (・・・でも、いつかは聞きたいな。) 私のために紡がれた、彼の声で、言葉で。 私に。 私に向けて、語って欲しい。 そのために。 「まずはここからだよね!」 「?」 まずは、夜はここにくることを日課とするところからはじめましょうか。 2004/11/15
■ 小さいけれど、大きな刺激 知ることが出来たと思えば、またすぐ知らないことが増えて。 まるでシーソーの様に、縮まっては遠くなる彼との距離。 それはさざれ波の様でいて、実は大波だ。 辛口が好きだと思っていた彼が本当は甘口好みだったと判明したら、 どんなに愛していたとしても別れてしまう人がいるように。 恋愛において、小さなこと程大きい刺激はない。 その刺激をなくしたいと思うけれど、 その刺激がなくなったら、どちらかはどちらかの元を去ってしまうのかな? りなりー悩む。
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