<side10:game>







赤い絨毯の上で跡部は膝を折って叩頭(こうとう)した。

国の最高位の人間への敬意の証としてする行為が、
今は含み笑いを隠すのに丁度いい。

最高位、王、そして父親。

これがその肩書きの男だと思うと滑稽でならない。

こんなのが・・・。

嘲りはひた隠し。

真上から朗々と聞こえる父親の愚痴に威厳はなにも無かった。


「反乱はまだなくならぬのか。何をしている景吾。
 お前には能力者として最高の軍で鎮圧することを命じたはずだ。
 今だ成し遂げられぬとは見込み違いではないか?」


高圧的な物言いに対しても冷静に受け流す。

いつものことだ。


「精進いたします」


低く感情を入れないように努めた返答が、謁見の間に響いた。

それに、王は鼻で笑ったようだった。


「お前は大切な私の息子だ。王位簒奪(さんだつ)の際にも多いに手柄を立ててくれた。
 今尚こうして城に留まり私の為に働いてくれている。感謝しているぞ」

「は」

「そこで、今回はこちらから計画を提案しようではないか」

「それは、どういうことでしょうか?」


眉根を寄せた跡部に、王の側近が前に進み出る。


「私から説明いたしましょう」


目を細めて相手を見やる。

側近は何を考えているか分からない涼しい顔で跡部を見ていた。

リョーガ。

本名であるかどうかも分からない、素性の知れない人間を王はいたく信頼していた。

口の奥に広がる苦い感情。

父親の王位反乱が成功したのは一重に彼という存在がいたからだ。

手塚王に仕え、彼を裏切った側近。


(何を考えている?)


腹の底へ疑問を押し込めて、跡部は口を開いた。


「計画とは?」


もったいつけるような間を開けて、リョーガは不適に微笑んで告げた。


「レジスタンスを今度こそ根絶やしにするものですよ」


数日後、都の外れで火の手が上がることになる。








黄塵の都1.5end







>>>あとがき

どうも下北沢じゅんです。
やっと、やっと終わりました第1.5部。
長らくお待たせして申し訳なかったです。
リョーガ出てきました。跡部とリョーガ。
この二人も色々裏がありまして、
よく考えれば黄塵の都のメンバーは皆が皆自分の欲望・願望の為に動いていて
誰が正しいとは言い切れない感があります。
でも書き始め当初は王道小説にしようと思ってたのにな・・・。
それもこれもテニプリの登場人物が多いからだよう。
一人一人にスポット当てたくなるじゃん!
このみんめ、やるな。

桜佳さんメールありがとうございました!
実は今回この回の話が出来上がったのはあなたのおかげですっ!!
リョーガですよリョーガ!ギリギリまで誰を当てるか決まってなくて、
桜佳さんのご要望があったおかげでこの後の展開にも味が出てきました!
ありがたや〜〜。
今後ともよろしくです〜。




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